男「そりゃ安いと思う」
女「そうかな。ウチの貧乏高校生にとっては背伸びした額と思うけど」
男「身体を売るならもっと稼ぎのいい場所あるんじゃないの」
女「どこ? 紹介して」
男「さあ知るもんか」
女「まぁもともとそーゆー場所で働くのは乗り気じゃないんだけど」
男「例の噂通りの体質なら引く手あまただろうに」
女「やっぱり有名なんだ。私のコト」
男「やっぱり本当なのか。噂のこと」
女「まぁね」
女「私は本当に性感染症にかからない。そして一生不妊の身体なんだ。やりたい放題だよ」
女「ふーんありがと。ビッチね。やっぱり陰じゃ散々言われてるけど」
男「開き直ってる?」
女「んーもっと酷い言い方とか知ってるし、いまさらどうでもいいよって感じ」
男「そんくらい神経図太くないと、そんな小遣い稼ぎはできないんだろうな」
女「さー? で、結局するのしないの? 私は本当にどっちでもいーんだよ」
男「しないよ」
女「あれっ? しないんだ」
男「うん」
女「したくないの? 私と」
男「うぬぼれるなってね」
女「ふーん」
男「んー」
女「じゃあ私、別のお客さん相手しにいくから。じゃーね」
男「じゃーな」
男「おお。昨日はどうだった」
女「別に。いつも通りフツーにセ○クスしただけ」
男「ふーん。えーとあれ、セ○クスてナカに出させるんだろ?」
女「うん。それがウリみたいなもんだし」
男「たった5000円で」
女「あのねぇ。私の場合は別に中でも外でも関係ないの。妊娠することがないんだから」
男「でもそれって病気じゃないのか」
女「さーね。まぁそうだとしてもこうして利用させてもらってるし、治したいとも思わないかな」
男「普通の女なら絶望したり発狂しそうなもんだけど」
女「『普通の女』って何だろね」
男「そりゃまー少なくともヤリマンじゃないのは確かだろ」
女「あははそりゃそ。それで、ねぇ、今日もココにいるってことはさ。やっぱり」
男「お金ないよ」
女「あら残念」
女「うん。私は結構感じちゃう方だし」
男「誰でも一緒ってことか?」
女「いや、上手い人も下手な人もいるよ」
男「そういうことじゃなくて」
女「なに? 両想い同士のエッチだと一番気持ちいいとか幻想持っちゃってるわけ?」
男「そこまでは言ってないけど、やっぱ少しは違うんじゃねーの」
女「違わない違わない。要は身体の相性とテク次第だよ」
男「ふーん。そういう稼業してる人間がそう言うなら本当なんだろうな」
女「あっもしかして君ってドーテーなの?」
男「ウチのクラスじゃ貴重な童○だよ」
女「ふーん。てっきりカノジョでもいるから5000円払わないのかと思った」
男「お前とのセ○クスが通過儀礼みたいな言い方するなよ」
女「え? だってあと君と担任の爺さんぐらいなもんだよ? ウチのクラスでまだ私と縁のない男って」
男「はっ?」
女「いや、彼女持ちの何人かはさすがに釘刺されてたみたいだけど、まぁヤリたがってはいたね」
男「ガリ男もピザ男も、DQNもリア充も、俺の友達も全員?」
女「うん。君の友達ってのは誰か知らないけど、まーあらかた食べちゃった」
男「ふーん。そうかよ」
女「ショック? ショック受けた?」
男「そりゃーショックだよ。俺の知らないところでそこまで話が進んでいたってのは」
女「あはは。じゃ、ちゃっちゃと仲間入りしないとね。君ならいいよ、分割払いでも後払いでも」
男「やらない」
女「えーどして? 今日は私、なんか気分なんだけどなー」
男「俺の方はそんな気分じゃない」
女「ふーん。ま、いいや、他のお客さんのとこいってくる。実はさっきから着信しっぱなし」
男「先客がいるならそっち優先しろよ」
女「ヤキモチ? 嬉しいなぁ」
男「帰る。じゃあな」
男「またいた」
女「や。こっちからしてみればまた来た、なんだけど」
男「そんなに放課後の中庭が好きなのか」
女「好きだよ。運動場の怒声とか、吹奏楽の間延びしたアレとか」
男「いつもベンチに座ってケータイいじってるだけだろ」
女「あコレ? 半分はフリ。こうやっていじってるといかにもな女子高生に見えるじゃん」
男「用事あるならさっさといけよ。どうせ今日も喘いでくるんだろ」
女「あははズイブンな言い方。や、まだ時間あるしただの暇つぶしだよ」
男「いつもなんのためにここに来てるんだよ」
女「君とおしゃべりするためだよ」
男「へー、実は俺もお前とおしゃべりするためにここに来てるんだ」
女「あら意外と掴ませないんだね」
男「そっちもな。てかお前ってさ、バカなことやってる割にあんまりバカじゃないんだな」
女「あはは。まーね」
女「そうだよ。あ、その気になった?」
男「でもお前はそうだとしてもさ、男側は大丈夫なのか」
女「さぁ、そこまで調べてないし面倒見れないけど。でもま、今のところ誰からもそういう苦情きてないし」
男「ふーん。それでその容姿風貌ってわけ。まるで身体売るために生まれてきたような女」
女「ねぇ、ひどいこと言ってるって自覚ある?」
男「あるよ。お前相手じゃなけりゃ生涯言う台詞じゃないな」
女「あはは、私なら傷つかないって分かるんだ」
男「いまさら言葉で傷つくほどメンタル弱くもないだろ」
女「そーでもないけど」
男「悩みでもあんの」
女「うん。ウチのクラスの最後の童○クンがなかなかオちてくれない」
男「画竜点睛を欠かせられて光栄だな」
女「あっバカにして。そんくらい意味分かるよ」
男「へぇ残念」
女「自信はあるほうかな。試してみる?」
男「口も使うのにまったく何の性感染症にもかからないのか」
女「かかってないね」
男「それじゃ風邪なんかにも相当の耐性あるんじゃないの」
女「へー。どうしてそう思うの?」
男「悪性のウィルスや細菌の侵入口は圧倒的に口腔鼻腔が多いから」
女「常識的な憶測だね。まぁ正解だよ。私はちょっとヤバげな恒常性を持ってるから、常に健康体なんだ」
男「そんな神から授かったような奇跡の身体を、ああゆうことに利用している訳だな」
女「むしろそんな事ぐらいにしか活かせないけどね。あっ、このことは黙っててね」
男「そういうデータ自分で分かってるなら、その方面にもバレバレだろうに」
女「まぁ特異体質が判ったのはちょいとしたコネでさ。まだ公にはバレてないんだ」
男「なかなか面白い身の上だ。今までの話が本当なら」
女「信じたら? 面白いでしょ」
男「咄嗟にそんな設定思いついたことは評価対象だろうな」
女「んー。誰にバレるって?」
男「親とか学校のお偉いさんとか」
女「親は生粋の放任主義、多分バレても『ふーん』で終わらすと思う。学校の教員には何人か常連がいるから平気」
男「常連」
女「気持ち悪い上に変態プレイ大好きなんだよあのハゲとか。まぁ大人は10倍増しだから稼ぎいいけど」
男「なんかすでにとんでもない一線踏み越えてんのな」
女「基本的に怖いもん無しだよ。気楽ー」
男「羨ましいな。俺なんて何も危ない橋渡ってないのに怖いもんだらけだよ」
女「たとえば?」
男「親。成績。部活の顧問に先輩。帰り道に妙に吠えてくる犬。そして虎視眈々と俺に的かけてるお前」
女「食べちゃうぞー」
男「淫乱キチガイ略してインチキ」
女「チキ? なんかコンビニ行きたくなったな。でもま、普通の高校生やれてるって充実してるでしょ。いーことじゃん」
男「でも俺とお前、どっちが得な生き方かって訊かれたら少し困るかな。正味な話」
男「放課後の中庭をエンジョイしながらケータイいじり」
女「なんだ同じじゃん」
男「最初は俺が先だった。気がついたらお前が居つくようになった」
女「そうだっけ? てかヒマなんだね。部活は?」
男「あー実はやめかけてる。顧問はうるさいし部員はガラ悪いし。かったるいし」
女「逃げ場にいきついたベンチの座り心地はどうだい」
男「まぁ別に否定はしないけど座り心地はいいよ、耳障りは悪いけど」
女「そう? ね、すぐ隣に座ったげよっか?」
男「お前は平気かもしれないけど、俺は変な風評立てられるのは嫌」
女「おっと着信。そろそろ行かなきゃ」
男「今日は何件回るつもり」
女「やだなぁ人をヤリマンみたいに四件だけだって」
男「笑える冗談」
女「ま、君ならいつでも最優先にしてもいいから。じゃあねー」
男「お」
女「ん」
男「別に競ってる訳じゃないんだけど」
女「でもなんとなく先に来た方が気持ち有利だよね」
男「HRから10分経ってねーよ」
女「あはは、お互いに水面下じゃ必死? よっしょっと」
男「昨日はいくら稼いだ? 別に聞いてもどうもしないけど」
女「んー。上の学年の常連二人、下の学年の童貞君一人、あと歴史の四十路デブ」
男「65000ってたった一日の手取りでそれかよ」
女「オマケに需要過多だよ。なんせ何度でも中出しさせてくれるカワイイ現役女子高生だし」
男「お前それなら上手くやれば廃業するまでにもっと稼げるだろ」
女「別にお金は有り余ってるからいいんだけど」
男「なにそれ。ちなみに貯金いくら」
女「さぁ? まともに数えたこともないや」
女「んー。身の毛がよだつほど綺麗な言い方をすると、夢を与えるため」
男「売春で中出しさせるのが夢かよ」
女「少なくとも世のモテない男にとっちゃ中出しセ○クスは夢でしょ」
男「でもしっかりお金取るんだろ」
女「取るよ。簡単に叶うような夢なんて価値ないでしょ」
男「5000ないし50000が簡単に払える輩もいるだろ」
女「リッチな感じだったら割り増し料金請求してる。実は時価っていったらみんな納得するよ」
男「じゃあ何度もヤラせるってのは? 夢叶えてやったあとの奴らにも商売してるってどゆこと」
女「まぁ見込み無い人生なら、チャンスあるうちに何度叶えてあげてもいーんじゃないかな。ってスタンス」
男「そりゃもう夢とは言わないだろ」
女「定義付けは人それぞれってこと。それに私、基本的に求められたら拒まないタチだから」
男「お前は求めないのか」
女「何か理想でもあればいいとは思ってるよ。あっ、でも今は強いて言うなら」
男「断るけどな」
女「別になーんにもひねくれてないよ。ただ自分の体質使って荒稼ぎしてるだけ」
男「身体以外の遊びはやらねーの? なんちゃらクラブに通ったりブランド追っかけたり」
女「興味ないかな。批判はしないけど、少なくとも私にとっては価値があるものじゃないんだよ」
男「セ○クスには価値があるって?」
女「何だろうね。うわべだけ考えれば、『自分の特長を生かして誰かの夢を叶える』みたいな」
男「『でも所詮売春だろ』なんて野暮なことは言わないけど、お前はその大義名分に振り回されてる気がするな」
女「そうそう。結局、価値に関しては自分でもよく考えがまとまってないんだよ」
男「しかし手元のケータイは着信するって訳」
女「そ。方針もあやふやな以上、もう出来ちゃった環境に流されるしかないのさ」
男「毎日毎日セ○クス三昧の環境ね」
女「目指せ千人切りってね」
男「百人は達成していたのか」
女「すごいでしょ」
男「すごいには違いない」
女「楽しいよ? エッチしてるときはね」
男「それは楽しいんじゃなくて一時的な快楽に溺れてるだけ」
女「いやいや回数重ねてるともうそんな次元じゃないんだよ童貞君」
男「んー悔しいが浅はかだったか」
女「確かに夢中になってると色んな事忘れるけど、楽しいってのはね、人間観察」
男「セ○クスの最中で?」
女「そう。その人の好みとか、癖とか、体質とか。全員細かいトコでは全然違うから面白いよ」
男「そうか。俺には理解できない境地だけど、面白い楽しいんなら別にいいと思う」
女「私がつまんないとか言えばよくないと思うの?」
男「思う」
女「どうして?」
男「どうしてだろうね」
女「はぐらかすときの台詞キタね。ここから君の真意を」
男「お。ケータイ光ってるぞ」
女「あ聞こえちゃった? まぁ、昨日一件回りそびれちゃったからね」
男「そいつぁマズイんじゃないか」
女「んーまずい。今からそのお客さんのトコ行く」
男「俺のせいだったら後味悪いから、当分ここには来ない方がいっか」
女「責任被ってるつもり? ダサくって笑えちゃう」
男「いいから行けよ。待たせてんだろ」
女「明日も来る?」
男「来ないでいてやるからさっさと行け」
女「来てよ。君とのおしゃべり楽しいんだからさ」
男「じゃあ来てやるからさっさと行け」
女「ん」
男「しっかり楽しんでこいよ」
女「あははナニソレ変なの。じゃまたね」
男「あーい。......んー。んー」
男「今日は朝から元気なかったな」
女「まー」
男「何があったか話せるもん?」
女「んー別に」
男「そ。話が発展しないならケータイいじり」
女「んー」
男「ん」
女「ねぇ、それ何やってるの」
男「クイズゲーム。アプリの」
女「楽しい?」
男「楽しいね」
女「そう」
男「んん」
女「君さ。これから私とエッチしない?」
女「シヨーヨ」
男「あ。ミスった。ハイスコアがパァ」
女「あはは妨害成功」
男「俺とするのが相応の癒しになるって?」
女「なるなる」
男「あ、じゃあやっぱり何かあったんだな昨日」
女「ギク失言だった」
男「本当は聞いてほしいクセにな」
女「いやいや見通されてるかー。今日の私はレベル低いからフルボッコだよ」
男「その代わり経験値も少ないけどな。まー話だけなら聞いてやるよ」
女「ありがと。ちゅっ」
男「ちゅは余計」
女「なんならウインクと同時に投げキッスしてあげよっか? 笑えるよ」
男「早く話せ」
男「あのお前さ」
女「んっ?」
男「その話本当なら大丈夫なのか」
女「大丈夫大丈夫、平気平気。もう済んだ事だし」
男「お前もうその客とは縁切るべきだろ」
女「いやー何も今回の件に限った話じゃないし、お金が絡むとこういうトラブルは付き物だし、ね」
男「いやもうやめとけよ」
女「心配してくれるんだ? まぁそれが狙いで話した節もあるけどね。あはは。アリガト」
男「笑えないだろ」
女「笑えるよ。君に話したらスッキリサッパリしちゃった。一件落着な気分だよ」
男「まぁ本当にそうならもう放置しとくだけ」
女「あそうだ、私とのエッチは?」
男「寝言は横になってからわざとらしく言え」
女「むむ、機を逃しちゃったか」
女「ないよ。まだ心配してくれてるんだ?」
男「後味悪いからなと付け加えておこう」
女「今日はね。凄くヨくしてくれる人も入ってるね」
男「ふーん誰?」
女「ピザ男君」
男「ピ」
女「そう。ウチのクラスの彼だよ。意外? ショック?」
男「いや。まぁ前に話してたし」
女「あはは。動揺してる動揺してる。でも残念ながら冗談じゃないんだよね」
男「冗談じゃなくて常連なんだろ。ピザ男」
女「うん。初体験ですっかりその気になっちゃってさ。もうくどいくらい優しくしてくれるんだよね」
男「ふーん。まぁそんな客もいるだろうな。ふーん。それもあの内向的なピザ男がね」
女「やっぱりショック受けてるでしょ? ね? どうなのかにゃ」
男「受けてるとしても何に対してなのか分からねーなこりゃ」
女「そう? ウチのクラスの男の子なんてほとんど一学期目から相手してるけどね」
男「んーそうなんだろうけどさ。なんか」
女「なんか?」
男「気持ち悪くなってきたな」
女「え、どして」
男「多分、今までのお前の話に真実味を感じてなかったんだろうな」
女「ああ。なるほどね」
男「あー。ごめ。今日は俺、先に帰るわ」
女「ええっもうちょっと話そうよ」
男「また今度な」
女「なにそんなにショックだった? ねー、ピザ男君との予約キャンセルするからさー」
男「ふざけるな。自分の言動には責任を持て」
女「別にふざけてなんか」
男「あー。んー。気の利いた言葉も思いつかねー。まあ今日は一旦こんな感じで」
男「よ」
女「ん」
男「ベンチに蓑虫? 早く座れば」
女「あ。うん」
男「今日はいつにも増してローテンションなのな」
女「昨日、セ○クスした後ピザ男君に告白されちゃった」
男「へぇ」
女「他のそんな客と同じように遠回しに断ったらさ。抱きついてきて放してくんないの」
男「まぁ、生涯に一度のチャンスだろうしな」
女「うん。なんかね。泣いたり怒ったりして、なんていうかすごく」
男「本気だった?」
女「そう本気だった。真剣。マジ。私が怖いって感じるくらいにね」
男「昨日の今日で穏やかじゃないな」
女「うん。まぁ穏やかな日なんて滅多にないんだけどさ」
女「あはは。今までそこまで理性ぶっとんだこともないかな。別に。適当に折り合いつけてバイバイしたよ」
男「バイバイって今更なんだけどさ、いつもどこでそーゆーことやってんの?」
女「大人相手だとラブホだけど、学生相手なら空きマンションかな。いくつかスポット知ってるんだ」
男「学生の懐に気い遣ってまで、そんな危ないところで二人きりになれるもんなの」
女「危なかったことあんまり無かったからねー。最近はさすがに考え改めてきてるけど」
男「遠慮することねーよ貧乏学生にもラブホ代くらい支払わせてやれって」
女「それじゃー純粋に夢を叶えて欲しいっていう男の子も手が出せなくなっちゃう」
男「夢、夢ってアホか。てめーの身の安全の方が先だろ」
女「あ、やっぱり心配してくれてるんだ。あはは」
男「ちげーよお前の自己管理のズサンさを非難してるだけ」
女「このー。つんでれーい」
男「まぁ元気を取り戻したようで何よりだなおい」
女「おー確かに。さんきゅう」
男「お前が産休だなんて大した皮肉」
男「肉体関係を経ての恋愛って? 順番逆だけど」
女「いやーピザ男君の場合は元々その気があって、エッチで一気に火が付いちゃった感じかな」
男「普通セ○クスした後は冷めるもんらしいから、珍しいケースではあるのか」
女「でもないよ。異性に免疫がない男の子ほどエッチさせてくれる子に依存しちゃうっていうか」
男「あー。メンヘラが自分の担当カウンセラーに恋しちゃうアレか」
女「かもね。相手にする方は心労蓄積もいいとこだよ」
男「ピザ男に同情はしないけど、気持ちは分からんでもないなー」
女「それ同情って言うんじゃないの。っていうのは置いといてなんで?」
男「ただの童貞思考。俺はピザ男と違ってわきまえはつけるつもりだけど」
女「よく分かんない。答え教えてよ」
男「童貞と淫乱が共感できるわけないだろ」
女「君がこっち側に来ればいいんだよ」
男「いつか行くとしてもまだ行かねー。戻ってこれなくなるし」
女「そう、私がもうとっくに戻れなくなってるから君が来るしかないよね。あはは」
男「お前とお喋りするからってだけで?」
女「だってフツーこういう場合下心あるもんなのに下半身思考じゃないってんだからさ」
男「カマかけてるつもりだったら悪いが、『恋』という字は下心アリってな」
女「じゃあ真心の方? 『愛』なんて見方を変えれば哀しいだけだよ」
男「まるでカレシがいたような言い方だな」
女「いたよ」
男「そうかよ」
女「でも安心してーまともに付き合えたのなんて10人くらいだから」
男「別に不安にはなってないけど安心できねー数だな。その中のカップル歴最長記録は?」
女「5日。相当続いた方だね」
男「飽き性だな」
女「歯の浮くような台詞も嫌いじゃないけど、一方的に満足されてもねー」
男「お前は何が不満なの?」
女「さぁ。安直に言えば一番はやっぱり束縛された感じ? 私にとってエッチは自由にやるものだから」
男「そりゃ目の前にぶら下げられた食えないニンジンは美味そうにみえるもんじゃないの」
女「しかも童貞ってことは最高の鮮度なんだよね」
男「俺は別に美味くはない自信があるし、食ったら食ったで現実知って落胆するだろお前は」
女「いやー落胆したとしても当分演技ぐらいはするよ」
男「まぁどの道その流れは俺としても面白くなくなるし。唯一優越できる部分は残すさ」
女「ちぇー。なんとなくプライドみたいなものが傷ついちゃった気分」
男「ざまーみさらせ」
女「私が『中で出してもいいよ』って言って、その気にならなかった男の子なんていなかったのに」
男「淫乱呼ばわりするのも飽きたな」
女「君が変人過ぎるばかりに私の溜飲もとい生唾が飲み込めないよ」
男「しかしこの『自分だけは違う』『特別』って感覚なかなか悪くないぞ」
女「悔しいな。君なんてムードさえあれば簡単にリミッター外せそうなのに」
男「外されちゃうだろうな。なんだかんだでお前魅力的だから」
女「おっとー? でもその手には乗らないよ。ちょっぴり危なかったけど」
女「いっけね」
男「おい」
女「うーそ。大丈夫、今日はお客さん一人もいないから」
男「それが嘘だろ。お前に限ってそんなはずぁねー」
女「基本的に予約スケジュールなんて私の匙加減ひとつだから、別に不可能じゃないんだよ」
男「客は納得するのか」
女「大抵はするよ。生中出しのチャンスを失いたくないなら私の機嫌を立てるしかない」
男「今更ながら中出しアリって恐ろしいアドバンテージなのな」
女「それが効かないフリーの童貞君がいるから困ってるんだ」
男「もしかしたら俺ってスゴイんじゃないの」
女「うんスゴイ。君ならエッチした後でも私の評価は変わらないよ」
男「苦しいエサだな、食いつく魚が見たい」
女「おかしいなー。釣り針は隠してるはずなんだけどなー」
男「シカケが悪いんだよ。もっと考えてこい」
男「使わせてやったぜ」
女「君って好きな女の子いるの?」
男「いない」
女「おーっと今のひねりのない即答ぶりは結構な判断材料になったよ」
男「逆に考え込んだら誤解されるし、『いる』と答えたらターン渡してしまうからな」
女「ファビョるって今の君みたいなのを指す言葉。で合ってるのかな。焦りがにじみ出てるよん」
男「そういうお前は好きな男でもいるのか」
女「おっと稚拙なオウム返しキマシタね。しかもそれ前に答えた気がするし」
男「答えてはないはず」
女「私は君のことが好きーおんぷ」
男「性欲的な意味でだろ」
女「同じことでしょー。結局プラトニックラブなんてあり得ないんだから」
男「お前が言うと説得力はあるけど、お前が言うからこそ納得できない」
女「あはは。善悪正否は置いといてそういう考え方は好きだよ」
女「えーホント? じゃあさっそく一緒に寝ようよ」
男「頭沸いてる発言は置いといて好きってのはやむを得ない切り返しってこった」
女「でも切り札は効果覿面だったわけねえ。今の事実上の告白だし」
男「まぁお前の定義で言えば、お前が好きな奴なんて100人以上いたらしいけどな」
女「それはまぁほとんどが私が好きっていうより、ナカ出しさせてくれる女の子が好きって感じだし」
男「イコールじゃないって? 有りがちに本当の私をみてくれる人いなかったとか?」
女「それもちょっと違うかな。そんなマイナスじゃないんだよ、どんな形であれ好きって言われたら嬉しいし」
男「つまりお前の嬉しいと思う『好き』は全部同価値ってわけだ」
女「いや、君のはかなり特殊かな。言うなれば面白い」
男「ああ。偶発的に得た変わった形の『好き』が斬新ってこと」
女「近いかもね。でもそのせいか知らないけど嬉しさもひとしおなんだよねーこれが」
男「他に何か言うことは」
女「両想い成立だね」
男「まじでか」
女「よかったね。それもこんな可愛い女の子」
男「自分勝手のやりたい放題の自惚れ屋であげく色気違いだけどな」
女「ね。明日の土日、どっかに出かけよっか」
男「本業の方は」
女「基本的に朝から夕方までは暇だし」
男「文字通り夜のお仕事ってわけか」
女「ねー、拒否しないってことは期待していいんだよね? でーとしよーぜー」
男「いいだろう」
女「ホントに!?」
男「おっ、今の演技は迫真だったな」
女「それでデートの条件は?」
男「場所と段取りは全部俺が決めるってのは?」
女「あはは乗ったよ面白そう!」
男「まぁあれだ。とりあえずこれ以上退けないからもうちょっと離れてくれ」
男「あーそれはいいや」
女「なんで?」
男「せっかく特別扱いされてんだから、ドン引きするくらい特別を目指すのも悪くなさそう」
女「あーそういうこと? 電話帳に名前連ねると自分もその他大勢になっちゃうから」
男「一気に不便さが引き立つだろ。それがいーんだよ」
女「電話番号もダメ? 緊急時はどうするの」
男「運次第。どっちかがダメだったらそれまでの挑戦だったってことで」
女「うーん面白いけどリスク大きくない?」
男「明日の朝11時、○○通りのデパート前に集合。以上」
女「今思いついたソレ覚えてあげるけど、全面的に大丈夫なの?」
男「さあ? お。気づけばもうシャレにならんぐらい暗くなってきたから今日はこの辺でお開き」
女「ねーちょっと展開早いってーもう一方的にさー。はいはい、じゃーまた明日ね」
男「また明日になんの?」
女「なるよ。行く。絶対行くから」
ピザ「ディーフェンスwwwwwwwwwwディーフェンスwwwwwwwwwwwwwwwwww」
男「はよ」
女「おはよーっ」
男「まず何事もなく合流したな。しかも同着ときた」
女「昨晩はなかなか寝られなかったんだぜーマイダーリン」
男「『明日何着てこっかなーこれがいっかなー』。ルックスに気回しすぎだろ」
女「『やっべーどーしよ人生初のデートだよどうすりゃいんだよー』。君の服だってぜんぜん着古してないよねソレ」
男「まぁさすがこなれてるっていうか完成度高いファッションだけどな」
女「初心者にしては割と私好みのカジュアルスタイルだけどね」
男「皮肉と賞賛って紙一重だったっけ」
女「ハズレ。表裏一体だよ」
男「いま何時ぐらいだったっけ」
女「さぁ。9時半ぐらいじゃない」
男「1時間半なにするつもりだった?」
女「そこのベンチに座ってケータイいじりかな。いつもと何も変わんないよ」
女「セクース」
男「適当に映画行こっか」
女「君のプランは朝11時からのハズだからアドリブの見せ所だね」
男「プラン? なにも? 今日は最後まで俺のアドリブだよ」
女「あら想定外。昨日は緊張しすぎて計画立てるの投げ出しちゃった?」
男「どうせ素人の付け焼き刃っぷりが露呈するだけだから最初から決め打ちしてた」
女「場所と段取りは全部俺が決めるってのはってのは?」
男「9割方お前への牽制。ベテランのお前には一分の隙も与えねーよ」
女「うーん大体理屈は分かったけど、臨機応変に立ち回れなかったら折角のデートが台無しだーね」
男「だが少なくともお前のデートプランだと俺にとっちゃ台無しどころじゃ済まされないからな」
女「あはは。締めにラブホに行かないデートなんて何年ぶりかな」
男「つまんなかったらバックレれば終了だよ。互いの連絡先知らないんだから」
女「いーねー緊張感あって。片時も離れられないじゃん形式的な意味でもさ」
男「あもしかしてこれ理想のデート? お手軽な繋がりがかえって結びつきを薄くしていたわけね。なるほどね」
男「恥ずかしい以前にアレまみれな手に触りたくねーよ」
女「そう言うかなと少し思った。でも内実9割の羞恥心を隠すのに中傷をダシにしちゃいけないよねぇ」
男「こっちは初デートなりに、根こそぎペースもってかれないようにするだけでも必死なんだよ」
女「どう? 女の子が故意に連れ立って歩いてくれる感覚は」
男「意外にもこれだけでお腹いっぱいなもんだな。このまま帰ってもいいくらい」
女「おっと逃がさないよ。ほら手出して」
男「いやいや大丈夫、こうみえて俺は満足してるんだ」
女「へーポケットに両手突っ込んでて物足りるんだ」
男「まぁ、無理に手繋いだり腕からめ合ったりしてある種の主張めいたことするより」
女「するより?」
男「誰かと一緒に歩くときに突っ込むポケットの方が大好きなんだよ。相手が老若男女関わらずな」
女「あはは何それ。カックイーね」
男「お前は手繋ぐ方が好きなの?」
女「さぁ? 大抵は相手の方から握ったり掴んできたから考えたことも無かったなー」
女「えーそれデート中の女の子に決めさせるの」
男「そういう言い方してるから観たくもない映画観せられるんだよ」
女「デートを成功させるためには、映画の主役ばりに熱演しなくっちゃね。まぁ中には面白いのもあったけど」
男「で。結局どれにすんの。俺はお前が選んだ映画に興味があるってことで」
女「じゃあねえ。君ならベタにこの『劇場版トゥルーアー・ゲーム』なんてどう?」
男「君ならってなんだよ相手に合わせようとすんな」
女「私これ観たいナー」
男「ああ、今までそのやり方で相手を錯覚させ続けてきたわけ」
女「んー別に隠してもないけど、私は面白い映画なら何でも好き。不快になるのは嫌い」
男「まぁトーゼンながら初見の映画なんて一部始終観ないと評価下せないけどな」
女「一部始終ねー。でも私はこれ観たいナー」
男「もう上映始まってるの分かっててか」
女「急がないの?」
男「まだペース預けたわけじゃないからな」
女「払うって」
男「すっこんでろ」
女「あーもーこういう場面で男の子がカッコつけたがるのってホント滑稽なんだけど」
男「お前は金に不自由してないけど俺はしている。だからいいんだよ」
女「決してバカにする訳じゃないけど、無理してまで自己満足に走る神経が理解できないなぁ」
男「まぁその議論は映画観終わったあとでも」
女「じゃー急ご急ご。15分ぐらい遅れてる」
男「お前って地上波の知らない洋画でも途中から楽しめる方?」
女「面白そうだったら邦画ドラマでもいけるよ」
男「四六時中脳内ピンクなわけでもないんだな」
女「日によってまちまち」
男「そういえば今日はまだ携帯いじってるの見てないな」
女「嬉しい?」
男「そこまで徹底できるお前を賞賛するよ」
男『えっ終わり?』
女『ん~』
男『だってこれ劇場版だろ? もう複線回収する場ないだろ』
女『あるでしょ。ココ』
男『続編? まじで』
女『まぁ見所の推理ギミックは面白かったから、別にストーリー展開に焦点あてなくてもいいんじゃないかな』
男『いやー素人ながらやっぱり締めがこうだと嫌でも目に付いちゃって』
女『もうちょっとライターさんに時間上げたら良かったのにね』
男『お前そんな言葉いつもの映画鑑賞じゃ絶対出ないだろ』
女『映画通かぶりの男の子相手だったら言うよ。それっぽい会話させてあげるためにさ』
男『また自惚れやがってと言おうと思ったけど、お前数だけは観てそうだしな』
女『映画に関しては私なりの一家言はあるよ』
男『それなのに徹底しておくびにも出さない演技って出来るもんなの?』
女『忍耐力ある方だから』
女「ご飯食べよう」
男「一字一句ぴったり。何か食べたいものある? おっと下品な答えは却下」
女「君が食べたいものを食べてみたいな」
男「『私おにく苦手ー甘いものが好きー』って言うのには飽きた?」
女「飽きないよ、男の子の反応は」
男「実際食べ物に好き嫌いあるの?」
女「好きなものはあるけど嫌いなものはないよ。何でも美味しく頂けます」
男「何でもおいしく頂いてるんだもんな」
女「下品な答え却下じゃなかったっけ」
男「じゃあお好み焼きでも食べに行くか」
女「あはは。いいねお好み焼き。私好きだよ」
男「今までのデートでそんなの誘われたことないだろ」
女「でも別に本気でそれを狙ったわけでもないんでしょ? 多分君は本当にお好み焼きが好き」
男「流石と言いたいとこだけど、まーわざわざ好きでもないもの食べに行こうとも思わないしな」
男「広島風お好み焼ききた!」
女「いいねー鉄板が焼ける音。カップルより家族連れが多いのも和むねー」
男「庶民的な雰囲気をバカにする様子もなくて結構」
女「私食事行くときの適応性万能だから、どこ連れてかれても相応に振る舞えるよ」
男「一流レストランの作法から胡坐のかき方まで?」
女「もちろん。今は丸イスの座り方だけど。あっきたきた特製ミックス玉」
男「マヨネーズとって」
女「お冷とって」
男「う・うまー。この雰囲気で食うこのお好み焼き無敵過ぎる」
女「何コレ美味しい!」
男「おわびっくりした」
女「ねーこれ私の知ってるお好み焼きじゃないって! これで580円? 嘘でしょー」
男「もしかしなくても演技じゃないのか?」
女「んーおいしーねぇちょっとお冷とって」
女「それだと次のラウンドに進んだとき2人くらいドロップアウトしないといけないよ?」
男「もうすでに1人抜けてるんだからそうした方が納得いく展開になってた」
女「まぁそこまで言及するならストーリー的にどうこうって問題まで発展しちゃうね」
男「んーやっぱこういう話って面白くしようとすればするほど難易度が跳ね上がっちゃうのか」
女「書き手と監督が兼任してなかったら足並みも揃いにくいだろうしね」
男「あソース取って」
女「お冷ー」
男「でも演出は良かったな。カメラワークにまったく違和感がなかった」
女「ええーあれでー? もっと凝れるでしょ」
男「どのシーン」
女「あの最終ラウンド開幕の。て。あー。あちゃーいつの間にか踊らされちゃってるね」
男「好きに映画を語れるっていいだろ」
女「もー油断しないから」
男「お冷取って。それで? 最終ラウンド開幕のどの部分?」
女「払うって。本当に美味しかったから自分のお金出したい」
男「だそうです。ご馳走様でした」
女「ご馳走様でしたーってちょっとお金出す出す」
男「『どこの世界に女に食事代出させる男がいるんだよ』 これ何人目?」
女「5人目くらい」
男「あれ意外とみんなちゃっかりしてるんだな。まぁお前金持ち宣言してるからな」
女「仕方ないなーこれは借りだからね」
男「それもなし。束縛されるの嫌いなの知ってて悪いがここは強制させて」
女「そんなーたとえ5円チョコ1枚でも借りを作るのは嫌いなのになー」
男「ちなみに今までの貸しは」
女「さぁ? 数えたこともないや」
男「前に聞いたような台詞。しかし可哀想に騙されまくって」
女「基本的に理不尽な面倒事は引き下がるよ。その代わり私との縁切りは徹底するけど」
男「徹底するってお前が言うとなかなか迫力あるのな」
女「ことだし」
男「ゲーセンいこっか」
女「ふーんデートじゃ割と定番だけど君の場合は得意なグラウンド選んだって感じだねー」
男「2人でボウリングやらカラオケやらは行かないだろ普通。この辺には遊園地も水族館も自然公園もないし」
女「あれあれ、君の知ってるデートスポットのレパートリーってそんなもの?」
男「カノジョできたことないっていう良い証明になっただろ」
女「なんならもっと楽しいところ教えてあげよっか?」
男「お前が楽しい場所じゃなくて俺が楽しい場所を教えてくれ」
女「さぁ。私の隣?」
男「ただし50センチ以上離れてる場合な」
女「そんなこと言われたら今すぐ腕に絡まりたくなっちゃうんだけど」
男「それ俺がバックレる引き金」
女「大丈夫、私がふざけて抱きついても何だかんだでデートが続くことぐらい分かってるから」
男「とりあえずゲーセン着いた」
女「プリクラなんダロ?」
男「違うのか?」
女「分かってるならやろーよ」
男「分かってるのはあの狭い空間でお前が卑猥な手伸ばしてくることぐらい」
女「逆に伸ばされたことならあるけど意外とどうってことなかったな。相手は興奮しまくってたけど」
男「心配しなくても俺は興味ないからプリクラは却下な」
女「縁がないから偏見持ってるだけでしょ? 今のプリクラ結構面白いよ」
男「おそらく何十パターンも生産されたお前と誰かのツーショット。その末席に自分も連ねたいとは思わないな」
女「回りくどい言い回しもモチロン、自分だけは特別主義って見てるだけでも恥ずかしくなってきちゃう」
男「最初からお前との会話は恥ずかしいこと尽くめだ押し殺せ」
女「それで結局プリクラはやらない流れに持っていくんだね」
男「明言したろ? プリクラは却下」
女「ちぇーシール張る場所決めてたのになー」
男「しれっと本気だったのかよぞっとしねーな」
女「付き添いでパチスロにも行ったことあるから平気」
男「目押しって分かるか」
女「簡単だよね」
男「じゃあ目押しつなぎって分かるか」
女「専門用語分かんないよ」
男「よし格ゲーはやめておこう」
女「玄人ぶっちゃってるけどどうせ中級の下位ってとこでしょ」
男「こうみえて実は店舗大会優勝経験アリだったり」
女「どうせ参加人数少なかったんだろうけどそれなら今から証明してみてよ」
男「白々しい言い方で俺に野試合を勧めるその魂胆は」
女「私はゲームは観るより自分でする方が好き」
男「今まで散々『カレシノカッコイイプレイ』を眺めてきたみたいだな」
女「そこまで考えてるんなら結局カクゲーはやらないみたいだね。よかったー」
男「いい敗北感だ」
女「ああーコレねー知ってる知ってる。気持ち悪いくらい私たちにピッタリかもね」
男「店内対戦でいいな」
女「これどこにコイン入れるんだっけ」
男「ここ」
女「あああーもーいいってのに自分で払うよ100円ぐらいさー」
男「じゃ直接画面タッチできるから店内対戦選んで」
女「仕方ないなー。その思い上がった鼻っ柱に屈辱をぶつけてあげる」
男「その様子だとこっちもスタンド経験アリみたいだな」
女「スタンドってカレシがやってるのを隣で見ること? うん、よく一緒にやったよー演技モードで」
男「このゲームは格ゲーと違ってスタンド回数多い方が俄然有利だけど」
女「だね。私今日は手心加えないから」
男「ここで暴露すると俺がいつもケータイでやってるのこのゲーム」
女「あはは、墓穴深くしてどうするの。もし私が勝ったらこれから自然にスキンシップしちゃうから」
男「何」
女「えーそんなあ。こっちの方が正答数多いのに」
男「なんでお前こんなアニゲーとスポーツの問題強いんだよ」
女「別に強くないよ。全部なんとなーく」
男「お前のことだから出題文みて出題者の意図とか読んでたんだろ」
女「自分の知識をほじくり返すっていうよりはとにかく目の前の問題に正解しなきゃね」
男「お前は分かってるなんて言葉使いたくないのに」
女「でも負けちゃった。さすがにこのゲーム誘うだけあって強いねー。運が」
男「やっぱりバレてるよな」
女「分からないと踏んだらためらいなく答え選択してるもんねー。運に任せて」
男「実力のうち」
女「負けはまけ。ね、もっかいやろーよ」
男「次は勝てるビジョンが見えないからこのまま勝ち逃げな」
女「えーいいじゃんスキンシップくらいさー」
男「よくねえそれが俺の篭絡第一歩なのはお見通しなんだよ」
彼女の元カレなんか普通に気になんないだろ
いや、ここまで多いと気にするだろ
その他大勢に組み込まれるやもしれないんだから
元カレだとかそんなレベルじゃねーだろこれ
女「それでエアホッケー? ダンスする奴でもいいのに」
男「胸揺らせたりミニスカはためかせたりする意味って?」
女「ねえあのさ。結構興味あるみたいだから後で行こーよ。休憩料金ぐらい出すからさ」
男「悪かったすまなかったもう言わないから」
女「そいでね。エアホッケーて普通にやっても勿論悪くないんだけど私それだとつまんなくて」
男「すでに飽食してるという。それでどんな悪巧みだよ」
女「しりとりなんてどう」
男「一回シュート打つたびにか」
女「ブービーしりとりって知ってる? 後ろから二番目の文字を使うんだ」
男「聞いたことねーけどつまり語尾が『ん』でもオーケーってこと?」
女「その代わり『ダンス』はアウトね。無条件1ポイント献上。思いつかないままシュートしてしまってパックが相手に触れた瞬間もペナルティ」
男「大体わかった。語の制限は」
女「3文字以上6文字以下でしりとり的常識の範囲内の名詞ね」
男「はは。ノリノリでやんの」
女「サルカン」
男「えっとカ。カマキリ!」
女「キャンドル」
男「ド。ド。ドイツ!」
女「イギリス」
男「リ。リング。ってのは無しでして」
女「だめーアウトー。さぁ大人しくゴールを空けるのだー」
男「くそおお」
女「ね。面白いでしょ?」
男「これ明らかにお前の土俵だろーが」
女「やるの2回目だけど? さ。パックパック」
男「なんとしても完封だけは。リ。リからか。リヤカー!」
女「かまいたち」
男「タ。タ。タ。タ。ターあーもう思いつかねーよばかタンス!」
女「その辺は大したものだったよ」
男「ゆえにこの悔恨は当分引きずる」
女「クイズゲームの時の借りは返上できたかにゃ」
男「ちくしょう上機嫌スマイルかよ」
女「そりゃ本気でやって勝負事に勝てたら嬉しいヨー」
男「こんな大差ついてもか」
女「最初から私がパーフェクト取れるかどうかの勝負だったんだけど」
男「くおおお。くおおお」
女「あはは。でも3点も取られちゃった」
男「悔しすぎて奥歯にヒビ入りそう」
女「君のそんな顔が見れただけで今日の収穫はあったかな」
男「じゃあ帰るか」
女「あら冗談が好きだねーお互いさ」
男「なんて女だまったく」
女「あダメだこれアーム詐欺だよ」
男「そしてお前は当然のようにベテランなんだな」
女「あっこれなら取れそう。このキャラの奴まだ持ってないんだー」
男「待て」
女「ん?」
男「ん」
女「お?」
男「ん」
女「ガンバッテ」
男「ちょ。静かにしてろ。ここだ。たぶん」
女「正解!」
男「よっしゃーっ。ほい」
女「んっ! アリガト!!」
男「なんだ、本心でもテンプレでも嬉しいってことで」
女「私は好きだけど、あんまりお金持ってないってことだよね」
男「高級ブティックやアクセサリーショップが良けりゃ別の男のときに頼む」
女「やっぱり一人前に女の子にプレゼント買ってあげてみたい?」
男「あげたくないと言ったら嘘になるって言っておく」
女「あはは。何買ってくれるの」
男「鈴が付いてないキーホルダーがいいな。それも105円のやつを4コ」
女「えっとどう突っ込めばいいのかな」
男「上手い具合にあった」
女「流石にわざとらしいなぁ全部計画通りのくせに」
男「どれでも好きなの買ってやるよ」
女「この場面でその台詞ってばどっちかっていうとカッコ悪いんだろーね」
男「初体験なりに緊張も満足もしてる」
女「あはは。じゃあこのウサギちゃん買ってくれる。4個全部これでお願い。色はそっちが決めてみて」
男「分かった。ピンク1個に水色3個な」
女「うん。もう行かなきゃ」
男「着信で溢れかえってるんじゃないだろな」
女「さぁね」
男「そこまでしてデートって形は望んでなかったけどな」
女「でもそうだとしたら嬉しいでしょ」
男「お前に少なからず危険がまとわりつくのが後ろめたいだけ」
女「君にもう少し押しがあるなら、今日のオツトメは全部ドタキャンしてもいいんだけど」
男「俺は安易に約束破る女が嫌いだ」
女「もちろん冗談だって。ってフォローを入れなきゃ落ち着けない辺り私もまだまだかな」
男「じゃあ。無理しないで頑張れよ」
女「ダメ元できくけど最後にキスくらいは?」
男「せっかくだから今日一瞬でも触れ合ってない状態を貫かせてくれ」
女「私の協力あってってことも忘れないでね。でも今日は、今までで一番男の子と触れ合えた一日だったかな」
男「それはよかった。うん。よかった」
女「明日の日曜日はダメ? 時間作れるけど」
男「無理してだろ。いいよ。明日は俺も予定あるし。本当はないけど」
女「うん。分かったよ。じゃまた月曜ね」
男「互いに気が向いたらな」
女「今日の君、割とお金持ってたでしょ。いつでも5000え」
男「ん」
女「5000円。5000円だ。うそぴったり」
男「おお。流石に今日気づかれるとは思わなかった」
女「キーホルダー4個って時点で違和感が限界だったけど。いつから考えてたの」
男「最初の映画のチケット代が高かったときから。後はひたすら細かいとこで稼ぎまくった」
女「すごいね」
男「ありがとう」
女「ありがと」
男「じゃ。またな」
男「二日ぶり」
女「うん」
男「あの後どうだった。昨日もドジ踏まなかったか」
女「うん。絶対にミスだけはしないってちゃんと意識してたから」
男「それを聞いて安心した」
女「でも私テキにはぽろっとミスしたかった気もするな。声かけられるまでボーっとしたりして」
男「デートカウントが1増えただけ。で済ませられないわけ」
女「うん。やっぱり違うよ、あれ。あのデート。おかしかった」
男「おかしい」
女「デートはいつも楽しもうとするから楽しいのは当たり前なんだけど、とにかく一昨日はおかしかったな」
男「そりゃ素直に嬉しいな、特別だったってことが。その話が本当だったらな」
女「ねぇ君ってさ。突然話変わるけど」
男「何が飛び出す」
女「私でさ。ヌいてるでしょ」
女「オ○ニー自○行為セ○ズリなんでもいいけど」
男「やけにストレートだな。まぁ急いでるみたいなら結論から言うと」
女「うん」
男「数日前からやめてる」
女「別に二次元のキャラとか答えても蔑んだりしないけど」
男「実話」
女「好きな女の子出来ちゃったら逆にヌけなくなっちゃうって幻想?」
男「無理はしてるけど今んところよく意地張れてる」
女「ふーん。じゃあ今溜まってるんだ」
男「分かったところで?」
女「でもさせてくれないんでしょ」
男「まぁこればっかりはどうしてもって懇願されてもダメ」
女「ダメかな」
男「貞操は唯一お前に優越できる部分だって前に言ったろ。ここは譲れない」
男「んん」
女「でもその行為に至るまでの経緯を加味するとさ。両者の愛情の極致的行為ともとれるでしょ」
男「典型的な恋愛セ○クスならな」
女「そう、その前提。だけど本気で子供を産もうとする段階に、ある種の境界線があるんだ」
男「膣内射精」
女「そう。遊びじゃなくなるんだ。遊びでやってしまったら、妊娠をリスクとしか考えない」
男「ところがお前の場合は常時ノーリスク」
女「うん。私にとってセ○クスは男の人を喜ばせるためのお遊び。一生、お遊び」
男「その不妊症はもう治らないのか」
女「分からない。病院でそれを調べてもらったら絶対に体質のこともバレちゃう」
男「前に言ってたちょっとしたコネってのは」
女「お父さん。カッコいいお医者さんだった」
男「そっか」
女「心配するようなことは何も。むしろ精力的に働いたぐらい」
男「5人?」
女「8人。栄養剤使っちゃうほど思いっきり喘いできた」
男「そりゃ疲れただろ。ヤリマンたって体力まで超人じゃないんだし」
女「でも中出しさせてあげた瞬間はいつも満たされた気分になってさ」
男「やりがい感じていいじゃねーか」
女「でも昨日は穴が空いてたみたいでさ。満たされて、いつの間にか流れ出すってのを8回繰り返したんだ」
男「じゃあ俺がやっても同じだろ」
女「違うよ。多分じゃなくて絶対違うから」
男「昨日散々疲れたんじゃなかったのか」
女「なんか禁断症状ってこんな感じかも。ちょっと本格的に何か侵食しちゃってるんだ」
男「おい震えてんの演技じゃねーのかそれ」
女「私は一度だって君に演技したことは」
男「おいケータイ鳴ってる」
女「うん。もう行かなきゃ」
男「行ってこい」
女「手握っていい。そしたら行く」
男「ダメだ行け」
女「ねえお願いってば」
男「おい。おい!」
女「握るだけ」
男「お前まじかよ。そんなにかよ」
女「パッ。うん元気出た。ありがと。おかげで頑張れそう」
男「そういえばお前ビッチだった」
女「あはは。君の手あったかかったー」
男「これ限りにしてくれ」
女「約束できないけどもう行かなきゃ、また明日ね!」
男「あ。ああー......。んー俺の手も冷たいんだけどな」
男「よぉ」
女「やぁ」
男「おいしょ。と。フゥー」
女「............」
男「............」
女「自分の顔、鏡で見た?」
男「お前ケータイの電源切ってるだろ」
女「顔ってそんなにアザだらけになるもんなんだね」
男「着信を黙殺したツケは存外大きいとみた」
女「どうせ私絡みのいざこざなんでしょ」
男「こんな暗くなるまで暇つぶしも無しによくもまぁ」
女「下校時間ギリギリになってもその状態でこんなトコ来るんだ」
男「寒かっただろ」
女「うん。星、綺麗だね」
女「抱きたい、抱かれたいってこと。って即答してきたけどね」
男「けど?」
女「今はわかんない。君はいつ『好き』を感じたの」
男「俺の場合は。うん。ありきたりだけど初めて見た瞬間にって奴だったな」
女「そう。私は正直、歯牙にもかけてなかったな」
男「路傍の雑草だったろ」
女「そこらのオトコノコだったな。童貞みたいだったから後でお楽しみ的なデザート感覚だった」
男「初めて会話したとき心臓が文字通りバク音立ててたってのは」
女「もちろん丸聞こえだったよ。だから当時から考えたらこんな展開大穴だった」
男「意地を張って全てが正解だったな」
女「今だから君が執拗に意地を貫いた理由、分かるよ」
男「答え合わせな」
女「君は本気でここまでインランビッチな私が好きだったから、全理性を懸けて気を引くしかなかったんだね」
男「うん。合ってる。赤ペンで丸」
女「そうかな」
男「頭のいいフリばかり思わせぶりな台詞ばかり。それぐらいしか能がない」
女「勝手に卑下自慢始めちゃって恥ずかしくない」
男「そんな俺がヤケっぱちに出したこと無い勇気振り絞ってな。笑い話どころか嘲笑話だ」
女「今話してるそれがすでに嘲笑ものだよ」
男「じゃあまぁ聞け。そんなこんなで俺はお前が好きだったってわけ。終わり」
女「そう。私の方は君とエッチなことしたい気持ちは変わらないよ」
男「ああ。あれほど拒んでもまだ諦めてないんだ。それともそのフリ?」
女「私は君を本気で騙そうと思ったことはないんだ。知ってた?」
男「知らなかったな」
女「セ○クスしよ。絶対にお互い気持ちよくなれるから」
男「嘘じゃないって言いたいわけだ」
女「うん」
男「それでも俺は断るんだ」
女「チャンスってなんのこと。膣内射精こそが本能に準じた恋愛の果て。認めなかったっけ」
男「お前の場合は違うだろ。その行為に溺れてきたからこそ、セ○クスレスが最高に映えるんだよ」
女「でも私と君の付き合いはどうなるの。両想いって名ばかりの宙ぶらりんカップルじゃん」
男「それでいいだろ」
女「本気? これからのこと。本気?」
男「最期まで貫く。もう決めてた。俺はずっとお前の隣でポケットに両手突っ込んだ童貞でいる」
女「そんなの耐えられるわけないよ。昨日は君の手に触れてから初めてミスしちゃったんだよ」
男「それは俺のせいか? 違うだろ。お前が自滅しただけ」
女「そんな言い方」
男「ごめんな。俺はお前の特別でいたいんだ。身体の付き合いより心の付き合いを重視させてくれよ」
女「プラトニックラブ? バカみたい、こんなの両方生殺しじゃん」
男「目の前にぶら下がった果実をかじったから全てが破綻したって話もあるだろ」
女「カッコつけちゃってカッコ悪い。私はこんなの嫌だよ」
男「でもそのやり方でここまでこれた。俺はすがりつくよ」
女「楽しかったって言わせてどうするつもり」
男「聞きたかっただけ。これからはそんな満足を続けていくつもり」
女「私が他の男の人とセ○クスしても平気なの」
男「束縛されるのが嫌いなんだろ。俺はさっきのことだけを除いて、全てのお前の意志を尊重する」
女「君は残酷なのに優しいんだね」
男「矛盾はしてないつもりなんだけどな」
女「ねえ。また話が飛んじゃうけど」
男「うん」
女「もしまかり間違って結婚にまで行き着いたらどうするの」
男「リスク負ってまで不妊症治して欲しくはないからな。たぶん養子をもらったりする」
女「うん。それもいいかもしれないね」
男「否定されるかと思ったけど」
女「少しだけセ○クスレスの可能性が見えた気がしたから」
男「結局幸せの定義なんて人それぞれってことだよ」
男「これから仕事だろ。ここでお別れだ」
女「やっぱり行った方がいいかな」
男「今までそのスタイルでやってきたんだろ。歯車が狂うのも今日までだよ」
女「あはは。そうだね。じゃあ最後にさ。一生に一度のお願い」
男「お前のことだからその言葉の重み分かってるんだろ。いいよ。許容できる範囲でな」
女「キスだけは許してくれない? それで私、頑張れるから」
男「デートの終わり際に答えたはずだろ」
女「君のやり方、全部受け止めるから。これからずっと」
男「分かった」
男「ありがとな」
女「ん」
end
乙
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